2014年1月アーカイブ

境界のエクリチュール

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 直接お会いしたことはないけど、サイト運営を始めた2003年からの付き合いの吉田さんが、写真詩集(と呼べばいいのかな)を出されました。吉田さんは長い間、暗室でモノクロ写真を制作されており、キヤノンギャラリー等で個展も開催されておられます。

 ジュンク堂大阪本店、ギャラリーライムライト、アセンス心斎橋、book of daysに、この冊子が置かれていますので、手に取って見てください。

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 印画紙の中では新商品であるオリエンタル イーグル VCRP-R を試しに買ってみた。RC印画紙はケントメアの次は何を使おうか迷っていた。フジでも良かったのだが、使ったことがないイーグルのRCを試してみることにした。価格はフジと同じだ。フジはベースが薄いのに対してイーグルは普通程度の厚さだ。おまけに意外なことにこの印画紙は多硫化調色との相性もばっちりだった。既に生産中止になってしまったが、オリエンタルのVC-RP2は多硫化調色にはまったくと言っていいほど反応しなかった。もしかしたら、イーグルのバライタも多硫化調色との相性がいいのかもしれない。これは試してみないと分からないけど。

 この画像は、全体を00号で4秒、5号で3秒、その後、空のみを2号で4秒間焼きこみしたプリントである。これではイマイチなので、ここからどうするかを考えないといけないわけだ。手前の人物は、かろうじてシャドーディテールは再現されているので、このままでいい。背景のビル群はもう少し薄くした方がいい。絵画で言うところの空気遠近法的な表現だ。露光を少なくしてビル群を薄くするか、ブリーチで薄くするかは考えどころなんだけど、組み合わせた方がいいような気がする。空ももっと白い方がいいだろう。ビル群よりも少し薄いくらいでいいのだ。今度はバライタでプリントしてみよう。


 

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 トラディショナルタイプのフィルムの現像は、シュテックラー氏二浴式現像液を愛用している。HP5+の現像時間を決定したくて、グレーカードを-5EVから+5EVまで撮影した。当たらずとも遠からずの現像時間は分かっているので、とりあえず20度A液6分、B液6分で現像してみる。フィルム乾燥後、暗室でプリントしてみると、シャドー部の記録はばっちりだが、ハイライトがとびぎみだ。つまり、露光は足りているが現像量が多過ぎる状態ということになる。それなら、A液を1割ほど短縮しよう。A液5分15秒、B液6分で今後現像することにする。これだと、プレストと同じ条件になる。
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 少し前に、セバスチャン・サルガドの「Genesis 」というモノクロ写真集を購入した。そのボリュームには圧倒される。内容は、地球規模で現在撮影可能な世界の原初の姿のスナップ写真、とでも言えばいいのだろか。南極から熱帯雨林の密林、自然から人物、撮影対象は多岐に渡っている。三脚を立ててじっくり撮られたような作品ではない。世界中を旅して、カメラでもぎ取ってきたそんな光景が展開されている。この写真集はかなりの大判サイズだ。とても重い。でも、そのわりには安いと思う。

奥琵琶湖雪景色

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 長浜の街に、雪が降ったら撮りたいと思っている場所があって、その機会をうかがっていた。かれこれ3年くらいになる。その間、雪が降らなかったわけではないが、気が乗らなかったり、休日が合わなかったりして撮影の機会が訪れなかった。
 
 そんな折、雪が降ったので、ニューマミヤ6にTMY2を装填して、長浜へ出かけた。でも、目的の場所は撮影に適さない状態だった。まさかそのまま帰宅す るわけにはいかないので、1時間ほど長浜の街を散策する。散策中にニューマミヤ6で3枚ほど撮影するが、つくづくこのカメラの露出計の信頼性ってどうなん だろうと思った。この日は単体露出計を持っていたので、露出は単体露出計で測光したのだが、カメラの内蔵露出計とはあまりにも差が大きい。これは、もしか したら僕のニューマミヤ6固有の問題なのだろうか。10年近くこのカメラを気に入って使っているのだが、この内臓露出計がどうにもこうにも使いこなせないのだ。一度オーバーホールしているので、調子が悪いということはありえないのだが。

 その後、昼食を済ませて、琵琶湖沿いを北へ向かう。琵琶湖の雪景色を撮るのが目的だ。南浜で三脚を立てるが、急に晴れてきた。昼間の太陽がまとも に照り付けている雪景色なんて質感が出ないので撮る気にはなれない。だからと言って吹雪の状態でも撮影が困難になるので困るわけだが。しばらく待っている 間に、太陽が雲に隠れたので、その隙を狙って撮影する。

 次にマキノへ向かう。南浜は晴れていたのに、賤ヶ岳近辺はすごい吹雪。この天候が継続したら撮影どころではないけど、今の季節は時間と場所を少し移動し ただけでも、天気は変わるので、期待を込めて大浦の集落から琵琶湖沿いをマキノへと向かう。海津大崎に近づくと雪は降り止んできた。三脚を立てて、海津の集 落を撮影する。夕方近くになってきたので、日差しが弱くなってきている。その後、海津の集落に入り、これも数年かけてなかなかものに出来ない桟橋跡を撮影する。雪が積もっているので、湖岸まで徒歩で行くのに苦労する。三脚を水の中に立てて長靴のまま、水に入る。ここはいつも標準近辺の画角で撮影していた が、今回は超広角のスーパーアンギュロン75mmを使ってみることにする。いつもと違うことをするとどうなるか試してみるところに突破口はあるのだ。気温 が0度前後のため、凹みボードのレリーズ連結部分の動きが悪い。赤フィルターとNDフィルターを使用し、シャッタースピードは30秒だった。30秒経過後 に、ぶれないように細心の注意を払いながら手でシャッターを戻す。雪がちらついて来たので、この日はこれで帰ることにする。4×5を3カット4枚とブロー ニー3枚を撮影して終わり。一日かけてこの枚数だが、上出来だ。
 
 それにしても、雪の日に撮影を行うのは足元の装備をどうするかで快適性が決まると思う。足が冷えると体全体が冷えてしまい、活動がしづらいのだ。僕は、 足元は、「日本野鳥の会」の バードウォッチング長靴を使用している。通常の長靴と違い、折りたたむことが出来る。そのためバッグに収納することも出来るので、便利である。それか ら、長靴の下はネオプレーンソックスを履いている。長靴は防水性抜群だが、通気性はない。長靴の中で汗をかくと足が濡れる。濡れた足は体温を奪う。そのため、濡れても保温力のあるネオプレーンのソックスを履く。これで足元が湿っていても体温は保持される。雪の日の撮影はこれが欠かせない。

墨は五彩を表わす

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 テレビ番組の「美の巨人たち」で、日本画家の加山又造の、天龍寺の雲竜図の特集が放映されていた。それにしても、加山又造は色鮮やかな版画から水墨画まで、画風が幅広いのに驚かされる。雲竜図は水墨画である。水墨画の世界では、「墨は五彩を表わす」と言うが、これは勿論、観念的な意味合いでのことだ。茶色がかった温黒調の墨とか藍が混ざった冷黒調の墨といった目視で判断出来る色の事ではない。墨で描かれた空に青を感じ、森に緑を感じるといったことだと思う。これは、水墨画に限ったことではない。モノトーンで表現される全てのものに言えることだ。

 しかし、「五彩を表わす」と言っても、それは普遍的な共通認識があるものに限られる。前述した、空や森、雪といったような、経験により記憶したものしか鑑賞者は色を感じ取る事は出来ない。
 モノクロ写真では、セーターを着ている人物のセーターの色までは表現出来ないのだ。その場面において、セーターの色が重要な意味を持つのであれば、もはや表現手法の選択からして間違っていると言える。最初からカラーで撮ればいい。

 しかし、そういう場合、その物体の色は大して意味はなさないのだ。意味はなさないので、セーターの色には気にも留めない。つまり観念的な段階で抽象化されているとも言える。
 水墨画も白黒写真も、その表現方法が発生した段階では、技術的にカラー表現が出来なかったため、モノトーンで表現するほかなかった。考えてみれば、かなり強い制約である。その制約下において諧調表現を模索してきたのだ。技術的にカラーで表現することが可能になった時代においても、その表現方法は独特なものとして存在し続けている。たぶん、これからもずっと。

ベタ焼き

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 久しぶりに暗室に入った。ある程度プリントしてみたいと思うようなネガが溜まらないと暗室作業をする気にはなれないのだ。まずは35mmのベタ焼きを作成するところから開始する。実は、ベタ焼きを作るのは、やめようとずっと思っていた。昨年の2月に祖母が亡くなり、遺顔を撮影した。ネガ現像はしたけど、ベタ焼きとはいえ、さすがにネガではなく正像で見るだけの精神的な余裕がなかったのだ。印画紙の価格も上がったことだし、一度はやめようと思った。2013年は、まったくと言っていいほど暗室に入らなかったのは、その数カットの写真に触れることを避けていた節もある。2013年はとにかく写真を撮らなかった。35mmは6本しか撮影していない。

 それでもベタ焼きを継続して作ろうと思い直したのは、過去のベタ焼きを見たときに、息子を撮影した成長記録とも言えるカットが散見されたからだ。フィルムが余った時は、撮るものがないので息子を撮るようにしている。ベタ焼きは無機質なインデックスプリントではなく、小さな写真の集合体であることを発見した。今まで数百本、ベタ焼きを作り続けた。これからも35mmに関してはベタ焼きを作り続けていこう。例え1本のうち全カットが駄作のフィルムであったとしても。

 シートやブローニーはフィルム面積が大きく視認性に優れているので、元々、ベタ焼きは作っていない。でも、35mmはベタ焼きを作っておかないと、一枚一枚の写真が埋没してしまうのだ。

 ベタ焼きを作ることの効用は他にもある。撮影時の露出やネガ現像が安定していれば、フィルムや印画紙を変えない限りは、引き伸ばしレンズのF値と露光時間をメモしておけば、ベタ焼きを作るのに試し焼きは必要ない。これはストレートプリントを作る時でも同じなのだが。ところが今回はいつもより2割ほど多めの露光時間が必要だった。撮影時の露光で失敗しているのなら、撮影カットごとにバラつきがあるはず。でも、そうではなく全カットが同じ濃度になっている。露出計のEI設定は間違いなかったはずだ。それならネガ現像を押し過ぎたのが原因だ。次回は、もう少し浅めの現像を心がけよう。

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 昨夜のうちに溶いておいたシュテックラー氏二浴式現像液とマイクロフェンタイプ(改)を使って溜まっていた未現像フィルムを現像した。

・HP5+(EI1600) マイクロフェンタイプ(改) 20度 12分

 これ、前回はうまくいったのになぜだか今回はうまくいかず、薄すぎるネガしか出来なかった。前回はニューFM2を使用し今回はM6TTLで撮影したフィルムだけど、まさかそれが原因だとは思えない。本気でこの組み合わせで使うなら、テストが必要だ。でも、増感現像ってあまりしないんだよな。EI800くらいで撮影すれば良い感じになりそうだけど、それだったら撮影スピードが不足するので、現像を強めにするしかなさそうだ。これ以上現像時間が長くなると精神的にきつくなるので、24度で処理するといいかもしれない。これは今後の課題ということで。マイクロフェンタイプは、使用する薬剤の種類が多いので、調合が面倒なので、あまり失敗はしたくはないなあ。


・400TX135(EI200) シュテックラー氏二浴式 20度 A液 4.5分  B液 6分

 この組み合わせは僕にとっては王道だ。今回も問題のないネガが出来上がった。


・アクロス120(EI50) シュテックラー氏二浴式24度 A液 4分  B液  4分

 薄いネガになった。ベルエアで撮影したフィルムなので、元々期待してなかったしどうでもいいなあという感じだ。時間だけ無駄にしたかな。シュテックラー氏二浴式現像液は原液の使いまわしなので、最後のセッションは現像液が疲労しているだろうから現像はもう少し強めにした方が良かったのだろう。


・アクロス4×5(EI50) シュテックラー氏二浴式22度 A液 5分  B液  5分

 これもうまくいった。使い慣れた組み合わせなので、当然と言えば当然。


 雑誌の記事を読んだのか、ラジオで聴いたのか忘れてしまったけど、最近亡くなった大瀧詠一さんがこんなことを言っておられたのを思い出した。

「街角で僕の音楽が流れていたときに、どこの誰の曲か分からないけどいい曲だなって思ってもらえたらそれでいい。」

そんなような内容だったと思う。でも、大瀧さんの音楽は独特なので、すぐに大瀧さんの曲だと分かってしまうのだけど(笑)。僕の写真もそんな感じでいいと思っている。



 

 このアルバムに出会ったのは、30年近く前だったような気がする。たまに取り出して何度も思い出したように聴いている。特に「1969年のドラッグレース」「ペパーミントブルー」は秀逸だ。



海津大崎暮色

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 今年の正月休みも今日で終わり。一日くらいはちゃんとした撮影に出かけようと思い、琵琶湖へ出かけた。昼間の青空が写りこんだ湖面はとても美しい。でもそれはカラー写真に向いた風景のような気がする。モノクロームで表現するなら日没を挟んだ30分ほどの黄昏時が相応しい。肉眼では薄明かりでよく見えなくても、フィルムにたっぷりと光を蓄えさせるように長時間露光すると、細部まで記録出来るのだ。

 75mmから500mmまでの7本のレンズを持って行ったが、撮影時間が限られていることもあり、使用したのは150mmと500mmだけ。最近は、1カットでフィルムホルダーの裏表で2枚撮影することが多い。フィルムに瑕疵があるのか僕のネガ現像に起因するのか分からないが、以前、乳剤の抜け落ちが発生したことがあった。せっかく撮影したのに後でそうなるのは悔しいので、1カット2枚撮影するのである。1枚現像してみて、状態が悪ければ現像条件を変えて残りの1枚を現像する場合にも役立つ。

 冬の夕暮れ時の湖畔はとても静か。暗箱を組み立てて撮影現場を立ち去ろうとした時、猿の親子が山から降りてくるのが見えた。今年も多くは望まない。2、3枚でも作品を作ることが出来れば大満足だ。

撮り初めは雑煮で

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キヤノン キスデジタルX3  Aiニッコール50mm F1.4


 昼過ぎまで寝てしまった。起床したら雑煮が出来ていたので、お屠蘇をちょっとだけ飲んでキスデジにニッコール50mmを装着して開放で撮影。プログラムでは、2EVほどオーバー露出になる傾向にあるようだ。マウントアダプターを使用しているので、近距離での開放では正確なピントが出ない。そのズレは勘で補正する。

 その後、無水エタノールでレンズを清掃する。今夜も昨日に引き続き、photo.net 無作為閲覧に興じよう。

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