どうしても写真活動がしたかった。それも暗室ではなく撮影を。暗室作業をしたければ、焼かなきゃならないネガはある。でも、暗室の気分ではなかったので、大判カメラ一式と、熱いコーヒーとお茶を魔法瓶に入れて、琵琶湖へ向かう。雪景色が撮りたかったのだが、雪は残っていなかった。湖岸へ到着してみると強風で白波が立っている。とても撮影どころではない。そんな状況であろうことは予想していたのだ。出かける前には必ず天気予報を見ていくのだから。それでも、出かけたかった。
低い気温と強風で耳が痛い。ダウンジャケットのフードを頭に被り、湖岸を歩いてみる。波しぶきの飛沫が、風に乗って飛んでくる。湖岸には様々なものが漂着している。ペットボトル等のゴミもあるが、流木や枯れた蓮、クルミ、菱、貝殻が散らばっている。流木は、風雪にさらされてかなり芸術的な形状をした物もある。ヘミングウェイの「海流のなかの島々」 の中に、画家である主人公が暖炉に流木をくべる場面がある。その中で画家は思うのだ。形の良い流木を燃やしてしまうのは忍びない。でも、そういった流木はまた見つかるので、燃やすのも楽しみであると。
この日は撮影するには適さない天候だったが、自宅で静物写真を撮るために、流木を集めて持ち帰った。撮影後に、また琵琶湖へ流木を返そう。そうすればまた琵琶湖が、それらの流木の形を変えてくれるだろう。僕は、風化途中の流木の姿を撮るだけだ。
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